
本学では、全国の高校生を対象に、武蔵野美術大学(以下、MAU)を舞台としてオンライン型探究プログラム「innovationGO to MAU」を2022年~2024年の3年にわたり開催しました。
本報告では、innovationGO to MAUのプログラム背景から3年間の実施内容、参加者の学びと成果までを総合的に振り返り、その意義と今後の展望についてまとめています。
プログラム概要
innovationGO to MAUとは、全国の高校生を対象に、MAUを舞台として実施されたオンライン型探究プログラムである。本プログラムは、美大の学びと探究学習を融合させることで、参加者の創造的思考力の育成を目的としている。
背景(教育的課題と社会的文脈)
近年、STEAM教育の重要性が高まる中で、知識の習得にとどまらず、創造的思考力の育成が教育現場に求められている。一方で、美術大学は「美術が得意な人の進路」と捉えられがちであり、進路選択肢としての認知が限定的である。こうした状況を踏まえ、本プログラムでは、美術大学の学びを高校生に開くことで、芸術教育の可能性と社会的意義を再認識する機会の創出を目指した。
方法(プログラム設計と実施プロセス)
本プログラムは、武蔵野美術大学を舞台に、オンライン形式で実施された。構成は以下の通りである。
FIND Program:高校生が美大生と協働しながら、自身の興味や問いを見いだすワークショップである。あわせて美大教員との対話の場を設け、専門的な視点から着想を整理する機会とした。
MAKE Program:FIND Programで得た気づきをもとに混合チームでアイデアを構築し、美大教員に向けてプレゼンテーションを行うプロジェクト型学習である。発表後には教員から講評を受け、専門的なフィードバックを通して発想をさらに深めることを目指した。
両プログラムを通して、参加者は情報収集・考察・構想・発表の一連のプロセスを実践し、美大教員との対話を通じて、自身の発想を再検討し新たな視点を得る機会となった。

結果(参加者データ・アンケート分析)
対象者は高校1〜3年生とし、応募者数は82名(FIND参加者:76名、MAKE参加者:31名)であった。参加者の居住地域は19都道府県に加え、海外(マレーシア)からの参加も見られた。
使用端末はPCが55%、スマートフォンが30%、タブレットが15%であった。
MAU認知度については、「よく知っていた」57%、「名前は知っていた」43%、「初めて知った」0%という結果であった。
満足度はFIND・MAKEともに高く、参加後には「美術大学への関心」が向上したことが確認された。
参加者の声(抜粋):
「自分の考えを言語化する力が上がった」
「ムサビの雰囲気が伝わり、入学への憧れが強まった」
「表現を言語化することへの興味が生まれた」
「実際に手を動かす体験型の学びの大切さを実感した」
「仲間とアイデアをつくっていく過程そのものが楽しいことだと気づいた」
「他者の表現を受け入れる姿勢が、自分の世界を広げるきっかけになると感じた」

考察(教育的意義と今後の展望)
本プログラムは、美術大学の学びを高校生に開くことで、進路選択の幅を広げると同時に、創造的思考力の育成に寄与する教育的価値を示した。特に、異なる背景を持つ高校生と美大生が協働することで、多様な視点の交流と自己表現の深化が促進された。
今後は、対面・オンラインのハイブリッド化や、地域連携型の展開などを通じて、より多様な高校生が美術大学での学びに触れる機会の拡充を図る。
報告書作成:一般社団法人 i.club
作成日:2023年9月27日